ドクター本多の相談室

院長コラム

No.7 日本食養道から考える~その1~

前回はヒトという動物の食性についてお話いたしました。
「雑食性」と言われているヒトが元来は「草食性」であったことがお分かりいただけたかと思います。
また、前々回お話した明治時代の日本人が健康で素晴らしい体力の持ち主であったことは、その頃までの日本人の食生活がヒトの食性にかなり近い内容(ごはんと一汁二菜)であったことを考えれば、当然のことと思われます。
ですからそれを踏み外した食事(牛乳や肉類)を飛脚に与えたら走れなくなってしまったという実験結果もうなずけます。

1億人規模の動物実験といってもいいような日本人の伝統的な食文化の崩壊が第2次大戦後、急激に起こったと申し上げましたが、実は、明治維新後の文明開化で都心部では徐々におこっていたようです。

日本の歯科医師の祖と言われている中原市五郎が昭和12年に刊行した「日本食養道」で大変興味深いことを述べています。今回はその中から抜粋してご紹介いたします。

『最近国民の体位低下ということが識者の間で非常に問題となっております。
本年5月15日に発表された陸軍省医務局長小泉軍医中将の談を引用いたしてみますると「陸軍では荘丁の体力を体格、活動力、精神力の三要素に分析して徴兵検査の際調査した。
体格は年毎に悪化し大正5年には千人につき不合格者二百五十人であったのに、最近では千人中三百五十人、場所によっては四百五十人の不合格者に増加している。
活動力、精神力も著しく劣等で如何なる労働にも耐え得る者は百人中僅か二、三人に過ぎず、従来日本民族の特質と謂われた持久力も最近の欧米式の栄養の摂取で著しく害されている」と言っております。
日本は近年運動熱が盛んでオリンピックにも多数の選手を派遣し優秀なる記録を作っております反面、国民全般の体位は斯くの如く低下しております。
之は実に寒心に耐えない問題で、一人二人立派な選手を作ったとて何の国威の発揚になりましょうか。
この原因は実に一日三度は必ず摂っている我々の食物であり、その食べ方であります。
現在の我国の食制は全く混乱状態に陥り欧米を模倣するかと思えば支那(中国)の真似をする等、実に基本も標準もありません。
天地自然の原則も風土気候の関係も顧慮せず、試験管の中の分析のみを標準として外国人も日本人も一緒にしています。
衛生学者は経済生活を念頭に置かず唯栄養のみを教えます。
この誤った食制を正しき道へ引き戻し我国の気候風土に適し、日本人の体質、精神、生活に合った原則を確立し国民全体に普及
しなければ、他の保険運動はすべて基礎工事のない高層建築と同様、戦争と言う地震がくれば全ては瓦礫の如く崩壊してしまいます。
故に旨い物なら何でも良い、栄養分は肉と牛乳と魚と卵だという様な考えや、消化が良いから病人にはパンを食べさせろ、といった様な考えを今一度よく検討して見てその誤りを正すことが現在の急務であると信じます。』

繰り返しになりますがこの「日本食養道」が刊行されたのは昭和12年です。
驚くべきことは、その頃すでに日本人の体位の低下が起こっており、識者にはそれが伝統的な日本の食体系の崩壊が原因であることがわかっていたということです。

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