ドクター本多の相談室

院長コラム

No.5 食と健康

前回、歯周病と松枯れの様態が非常に似通っていることをお話しました。
松が生きられる条件が失われたため、松枯れが起こったことがお分かりになったと思います。
そして人の生きられる条件が失われつつあると、歯周病にもかかりやすくなることもご理解いただけたと思います。

人が生きていくためにはさまざまな条件が必要になりますが、その中でも特に重要な事項に「食」の問題があります。
今回からこの「食」についてスポットを当てて何回かお話してみようと思います。

昔から日本では「食が血になり、血が肉になる」と言われてきたように、「食」および「食生活」の問題抜きにはわれわれの生活を語ることはできません。
現代では「栄養学」が確立され、特に生活習慣病にはカロリーや栄養素(ビタミン・ミネラルなど)の計算といった食生活指導は欠かせません。また、世を挙げての健康食ブームです。
「何々が糖尿病に効く」「何々を食べるとガンにならない」といった類の本や雑誌は巷にあふれかえっています。
カロリーメイトやサプリメントといった栄養補助食品の売り上げは年々急速に伸びています。その結果、今の日本人は健康に不安なく、毎日を過ごせているのでしょうか?
病人が減ってきたのでしょうか?
答えは全くその逆です。
かえってあふれかえっている情報に踊らされているように思えて仕方ありません。

明治時代の初めにドイツ人の医師・ベルツ博士が現在の東京大学医学部に西洋医学を教えに来日しました。
日本をこよなく愛し、さまざまな視点から見た日本を本国ドイツにいろいろと報告しております。
そのなかでベルツは大変面白い実験をしました。
彼は日光が大好きで数回訪れていますが、最初は馬車を使いました。
馬を途中で2回換え、都合3頭で14時間かかりました。
次に訪れたときは人力車夫を雇って行きましたが、車夫はたった一人で、それも14時間半で着いてしまいました。
ヨーロッパ人では考えられないこのような素晴らしい体力を持った人間が当時の日本では決して珍しくなかったという文献が残されています。

また同じころ、大森貝塚を発見したことで有名なアメリカ人のモース博士は、飛脚が1日に2~30km以上を毎日当たり前に走るのを見て、彼らを集め毎日の食事の内容を調べました。
博士が驚いたのはその食卓には肉も牛乳もない、当時の日本ではごく当たり前の「ご飯と一汁二菜」のいわゆる「粗食」だったことでした。
そこで博士は彼らに肉を食べさせ牛乳を飲ませたところ次の日から疲れを訴えて皆走れなくなってしまいました。
2週間後にまた元の「粗食」の戻したところ、すぐに何事もなかったかのように走れるようになったそうです。

今からわずか二世代ほど前の我々日本人は、食生活が今の栄養学では考えられないような「粗食」 であっても非常に健康で強靭な体力の持ち主であったことが二人の外国人の実験からわかったのです。

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